第五章
神話の回廊
~MYTHOLOGICA~
関西の喧騒を抜けた先は、静寂に包まれていた。
だが、それは平和な静けさではない。神代から続く、重苦しい「気配」だ。
「……道が、ない?」
鳥取の『砂丘の蜃気楼花子』が、さらさらと崩れる砂の幻影を見せ、一行の方向感覚を奪う。
その横では、島根の『宍道湖の夕暮れ花子』が、ただ静かに涙を流し続けていた。
その涙が真珠のように光り、あまりの神々しさに直視することすらできない。
「日本の夜明けは近いぜよ!!!」
静寂を破ったのは、山口の『長州維新の花子』だ。
ふぐ提灯を振り回し、現代政治への不満を大音量で演説し始める。
それに呼応するように、広島の『呉の溶接工花子』が、無言のまま激しいアーク溶接の火花を散らして威嚇した。
「チャッ、チャッ、チャッ!」
「踊る阿呆に見る阿呆!」
香川の『釜玉うどんの湯切り花子』が完璧なリズムで湯切り音を刻み、
徳島の『熱狂の阿波踊り花子』が強制的に全員を踊りの輪に引きずり込む。
愛媛の『みかん剥きの花子』は、その様子を見ながら、光の速さでみかんの皮を剥いては並べていた。
「家来にならないか? きびだんご(泥)やるぞ」
岡山の『桃太郎気取りの花子』が泥団子を差し出してくる。
断ろうとしたその時、背後から低い唸り声が響いた。
高知の『土佐闘犬の花子』。
横綱級の闘犬霊を従えたその姿は、まさに「鬼姫」。
『神話、維新、そしてうどん。ここは日本の原点(オリジン)』
歴史の重みが、彼女たちの背中を押している。
だが、そのさらに南から、大地を揺るがす「熱」が迫っていた。